松蔭おかもと保育園

ふたりだけの時間 園児数:60名

正面外観

分節された外壁が街への圧迫感を和らげ、御影石がまちなみに溶けみます。中央から右方向へ登っていくスロープが「おはようさかみち」です。

はらぺこほーる

こどもたちの座る椅子は、園長の発案で行事の際に簡易ステージにできるように製作されました。右奥の調理室は床を下げて、子どもたちの高さに合わせた配膳カウンターを設えました。

夕陽のひろば

近所のお花屋さんのご協力のもと、季節の草花が彩りを添えます。

階段下のあなぐら

床を掘り下げた天井の低い空間です。保育の場面に応じて多様な使い方をされています。

吹き抜けのある階段

夕陽のひろばに面しており、草花やそれに舞い降りる鳥や虫たちを様々な視点で楽しめます。


ふたりだけの時間

正門から玄関を結ぶ長いスロープは「おはようさかみち」と名付けられました。長時間保育が常態化し、休日保育まで求められるいま、親子が一緒に過ごす時間は思いのほか少ないのではないでしょうか。自転車を降りてからバイバイするまでのわずかな間でも、さかみちを連れ立って歩きながら、ふたりだけの時間を大切に感じてほしいという思いを、このスロープに託しました。

その上部には、正門前から玄関まで屋根を連続して設け、荷物を抱えてこどもの手を引く保護者が、雨天時でも登降園しやすいようにしています。


レベル差のある敷地の特性を活かし、1階床レベルを「だいちのひろば(乳児園庭)」より低い位置に設定し、保育室からこどもの目線で外をのぞけば、地面を彩る草花が間近に見えるようにしたり、「はらぺこほーる」から2階へ至る階段下の床を掘り込んで「あなぐら」にするなど、こどもたちの目線の上下変化を誘う空間構成としました。

「あおぞらひろば(3階屋上)」からは、巨峰が豊かに実る「ぶどうのひろば(2階屋上)」と、「だいちのひろば(1階園庭)」を見下ろせるようにし、上下階の連続性を高めています。


外観は、本園の母体である神戸松蔭女子学院大学の学舎の特徴を踏襲するとともに、阪神間の景観を形成する御影石を使いました。神戸松蔭の品格を継承しながらも、地域の文脈を取り込んだデザインとしたことは、住民の皆様と共に保育を展開していこうとする園の思いと符合するものとなりました。


名称:社会福祉法人松蔭ミカエル福祉会 松蔭おかもと保育園

工事種別:新築

建築場所 兵庫県神戸市

延床面積:509.02㎡

構造・規模:鉄筋コンクリート造2階建

園児数:60名

掲載:『建築ジャーナル』2016年12月号第1260号(こども施設特集)