エンゼルキッズ清和台

育ちの素材 園児数:30名

低さを意識する

高さではなく、低さを意識し、圧迫感のない抑制の効いた外観です。白い外壁は本漆喰で、 窓は木製サッシを使用しています。

朝日が差し込む園庭

玄関ホールや乳児保育室から、デッキテラスを介して直接出入りできます。南東の光が差し込む明るい園庭です。

丸太のならぶ玄関

杉丸太の列柱が立ち並ぶ、玄関ホールで、一時保育スペースも兼ねています。石組みの滝が潤いのある水音を園内に漂わせます。

畳のある保育室

雛壇造成地である敷地の特徴を積極的に利用し、0,1歳児保育室内に段差を設けて畳コーナーを作りました。ベビーサークルは子どもを檻に入れているようで抵抗があるという話を耳にしますが、段差がその役割を担いますので、同じ効果が得られます。

見せるおむつ棚

見せたくないものを隠すのではなく、見せたくないものこそ美しく見せる収納です。玄関へ向けられた、美しいワインレッドの戸棚は、中におむつが入っているとは思えませんね。


育ちの素材

 日本で伝統的に使われてきた本物の建材に囲まれた空間で暮らすことを、こどもたちの「育ち」につなげようという考えのもと、杉や高野槙の丸太、竹の床や天井、御影石、杉の腰板、障子紙、畳などとともに、「漆喰」を使用しました。

 新建材に比べて伝統的な建材は、低年齢のこどもたちが暮らす空間において多くの負の側面と隣りあわせとなります。例えば、障子紙は簡単に破れ、こどもたちの絶好の標的となりますし、節や割れのある丸太柱は削げが刺さるなどの怪我の心配を孕みます。防汚性能や耐久性の高い吹付外壁材に比べて「漆喰」は汚れやすく耐久性にも劣ります。普通なら管理する立場からは敬遠されてしかるべき伝統的な建築材料たちですが、私たちはその負の側面こそが、こどもたちの本当の「育ち」につながると考えました。

 こどもたちの「育ち」に対して、建築が僅かでも貢献できるとすれば、それはこどもたちの小さな手が建築材料に触れる瞬間にあるのではないかと考えています。時には優しく、時には厳しく、その時々に応じて違った表情を見せる伝統的建材は、無表情な新建材にはない力を備えています。コンクリートにはない柔らかさと、ビニールにはない肌ざわりと、金属にはない暖かさを持つと同時に、時には痛みをもってこどもたちに無言の教えを与えてくれます。

 玄関まわりや一時保育室に聳える丸太の柱は、身太い安定感と凛とした垂直性を感じさせますが、削げが刺さったり、出節に頭をぶつけたりと、こどもたちの怪我につながりかねない材料でもあります。しかし私たちは、全ての危険を排除するのではなく、それらを自然物からの教えと考え、こどもたちの「育ち」のきっかけにしようとしています。

 外壁に塗られた「漆喰」は、まぶしいほどの輝きをもちつつも、やわらかな光をこどもたちに注いでいます。力強い陽射しを柔らかな光に変えてはね返す様は、食べ物を咀嚼してこどもに与える母親のようでもあります。また限りなく優しいその手触りは、適度な湿度と温度を合わせ持ち、体全体をぴったりとくっつけたくなる心地よさを与えています。「漆喰」は五感を通じて、こどもたちの心に働きかける力を持った材料と言えるかもしれません。

 

名称  :学校法人森友学園 エンゼルキッズ清和台

工事種別:新築

建築場所:兵庫県川西市

延床面積:323.69㎡

構造規模:木造 地上2階

園児数 :30名

受賞  :第6回『日本漆喰協会作品賞』